症状はありがたい

ホメオパシーを勉強しているとよく言われるのが「症状はありがたい」という言葉です(これは私の通っていた学校での話だけなのかもしれませんが・・・)。

「心や体の不調を症状というサインとして知らせているからこそ、症状というものはありがたいのだ」というのがその理由です。
症状というものは何の意味も理由もなく突然現れることはありませんので、その原因を探るキーとなる症状というものは非常にありがたいものだという話になります(余談ではありますが、レメディーの解説書でも『〜以来』という一文がよく見受けられます。ホメオパスと話している時に「その症状が出る前に何かありませんでしたか?」等と聞かれる事も多いかと思いますが、それは原因を探しているからなのですね)。

ホメオパシーでは症状そのものについては悪いものだとは考えません。繰り返しになってしまいますが「症状を出すには何らかの理由ががあり、その結果として症状が現れるのだ・・・」というとらえ方をするだけです。ですのでホメオパシーでは症状を抑圧するのではなく、出ている症状については完全に出し切れるよう、ご自身の自然治癒力が働くことをお手伝をするだけのことしか出来ません。
例えその症状自体を抑えたとしても原因が残っている限り、その症状は形を変え何度も何度も繰り返し現れることになるのです。逆に言えば、原因をなくせば自ずと症状もなくなるということになります。

また、この延長上の考えとして「症状は原因があって発症していえるのだから、その原因を癒せば症状も治まるし再発することもない」という考え方があります。
ですので「症状はしっかり出し切って、その原因をクリアにしていこう!」というのがホメオパシーの基本の考え方になります。

症状が出ているとき、それが辛いからという理由だけで薬などを用いて症状を一見消え去るようにすることについては『抑圧』という言い方をしています。
例えば痛んだ果物を食べて下痢をしている時に下剤を飲んで下痢を止めた場合を考えてください。原因は痛んだ果物ですよね? 体は体内に入ってきた痛んだ果物を不要なもとの認識して早急に体外に排出しようとして下痢という症状をおこしているだけです。このときに下痢という症状だけを見て下痢を止めるために下痢止めをとったらどうなると思いますか? 下痢止めをとったことによって下痢は止まりますが、下痢の原因である痛んだ果物はまだ身体の中にあるとしたら? 
ホメオパシーではこのような場合、その症状が見た目には改善されたとしても薬によって症状が治癒されたという理解はしません。薬によって症状を抑圧した為にかえって症状を見えない深い部分に押し込んでしまった、というとらえ方をします。これが「抑圧」ということです。

例えばレメディーをとったら酷い発疹が出てきたような場合でも、可能であれば皮膚には何もしないで様子を見て欲しいけど、どうしても何かを塗りたいならホメオパシーのクリームを塗って様子を見るように等と言われる事もよくある事かと思います(個人的にはホメオパシーのクリームを塗るのはあまりお薦めはしません。レメディーが何らかの抑圧を引き起こす可能性があるからです)。
これは体が皮膚を通してその人の体内にある不要な物を排出しているのだから、薬を塗ることによってその自然な排出を阻止するのではなく、自然のままにして不要なものを出し切るようにした方が、結果的にはより健康な状態に体を回復するのだ、という信念に基づいての指示なのです。

ただ、そうは言っても目の前に赤く掻き壊してジクジクに爛れた皮膚があって、それが我慢ならないくらい痒くて痛い場合、それを我慢するのは並大抵な意志力では出来ませんよね。それにホメオパシーの好転反応の度合いや長さは、レメディーをとった人によって変わってきますので「この辛さをいつまで我慢すればいいのですか?」とホメオパスに聞いても多分、明確な回答は得られないことの方が普通です(この問いに対して明快に回答が出来る方がいらっしゃったら、それはもう神様並の能力をお持ちだと思います!)。「1日だけで終わる」というのなら頑張って我慢は出来るけど、「いつ終わるともしれない症状を我慢しろ」と言われてもそうそう我慢が出来るものでもありませんよね。
「この薬を塗れば、痒みはものの数分で薄れ、皮膚の炎症も翌日には治まる」というのがわかっていればいる程、誘惑も大きいとは思います。
私個人の考えとしては、どうしても辛かったら一時しのぎに薬をとるのもアリだとは思いますが、その判断を下すのはホメオパスではなく、あくまでご自身がするべきものだと考えます(ホメオパスとして薬をとるのは勧めませんが、だからと行って止めも致しません。とるのも、とらないのもご本人の判断次第です)。ただし、レメディーをとって好転反応を抑圧的な薬で抑えるという行為を繰り返すのであれば、ホメオパシーを選択するのは間違っているのではないかな〜・・・、とも思いますけどね(実際、場合によっては「病院と薬を選択されるなら、ホメオパシーは止めた方がいいですよ」というご提案をすることもあります)。
良い機会ですので、ここら辺を含めて自分にとって何が一番ベストなのかということを是非、真剣に考えてみてください。

ホメオパシーは自分自身が持っている自然治癒力で症状を癒していくものです。レメディーをとれば全てが魔法のように治癒するのではありません。辛く苦しい症状が出てくる可能性だって充分にあります。
まずは自分の自己治癒力の力を信じる事から全てがはじまります。
全てを信じた上で心の底から『症状はありがたい』と言えるようになったときにはじめて真の癒しへの道が拓けるのではないかと思い始めた今日この頃です。

症状を出し切り、原因を根絶して初めて心身ともに健康な状態となるのではないでしょうか。